補助金の競合比較はどこまで書く?「書きすぎ」で落ちる申請書の共通点と3つの合格ライン
「競合を調べるほど書けなくなる」「自社の強みのはずが他社紹介になった」…補助金申請の現場で一番つまずきやすいのが競合比較です。欲しいのは知識ではなく、迷走を止める終了ライン。この記事は、申請書の枠に落ちる具体に絞って解説します。
結論|競合比較は「3社・3項目・1結論」で止めるのが正解
競合比較の正解は、比較対象を3類型以内、比較軸を3つ以内、結論を1つに固定することです。これだけで事業計画の一貫性が守られ、書きすぎによる失点を避けられます。最後は必ず「だからこの補助事業の活用が必要」で締め、審査員が一言で理解できる形に整えましょう。
審査員が求めているのは「業界レポート」ではなく「自社の立ち位置」
競合比較は市場の全体像を語る場ではありません。審査員が見たいのは、経営課題に対して自社がどこで勝負し、なぜその投資が必要かという立ち位置です。
よくある失点は、競合の強みや価格を延々と記載して主語が他社に移ること。すると「自社は何をする事業者なのか」が薄まり、実行計画の説得力が落ちます。
結論から逆算しましょう。
- 結論:自社が選ばれる理由
- 背景:競合や代替と比べた差
- 接続:その差を作るために必要な設備、IT、技術、人の体制
文字数よりも「比較表+3行の結論」が最強である理由
文章で長く書くほど、読み手の脳内処理負荷が上がります。反対に、表で一気に整理すると伝達コストが下がり、採択審査の評価に直結しやすいです。
おすすめは「〇△×表」か「簡易マトリクス」です。表の下に3行だけ置きます。
- 1行目:差別化の結論
- 2行目:根拠の一言(実績、工程差、顧客の声など)
- 3行目:だから投資が必要
この形なら、書きすぎずに具体的で、申請書の項目にも収まります。
その比較間違ってます。書きすぎて落ちる申請書の「3大NG」
不採択の多くは情報不足ではなく、書きすぎで要点が溶けた状態です。特に多いのは悪口、全戦全勝、競合なしの断言の3つ。いずれも客観性と市場性を損ね、申請の評価軸からズレます。今の原稿がこの3つに触れていないかを先に点検し、修正の方向を決めてから追記しましょう。
NG1:競合へのリスペクトがない「単なる悪口・否定」
「A社は質が低い」「B社は対応が雑」など感情的な否定は、根拠が弱いだけでなく品位の面でも損です。審査員は比較の正しさより、事業者としての信頼性と説明責任を見ています。
否定を書きたくなったら言い換えます。
例:納期が遅い→繁忙期に納期が延びやすい、など条件付きで具体化
- 悪口ではなく「顧客が困る場面」
- 断言ではなく「観測できる事実」
NG2:根拠なき「全戦全勝」の比較表
価格も品質も納期も全て勝つ表は不自然です。読む側は「分析が浅い」「市場が見えていない」と感じます。むしろ信頼を生むのはリアリティです。
- ここは同等、ここは負ける
- ただしこの軸では勝てる
この構造にすると、差別化が際立ちます。強みを尖らせるために、弱みも最小限だけ開示するのがコツです。
NG3:「競合なし」と断言してしまう(市場性の否定)
「競合はいません」は、場合によっては「市場がない」と読まれます。直接競合がいなくても、顧客は必ず別の選択肢と迷っています。
そこで代替や現状維持を競合として置きます。
この比較を入れるだけで、市場の存在と需要の具体性が伝わり、評価が安定します。
- 代替:外注、既存ツール、汎用品
- 現状維持:今の方法で我慢する
比較対象の選び方|「競合がいない」場合の対処法
「うちはニッチで比較できない」と感じるときこそ、比較対象の置き方が勝負です。直接競合に限定せず、代替と現状維持を含めて3類型に分ければ、比較は短くなり結論が鋭くなります。対象を増やすのではなく、迷いの選択肢を整理して、申請書の枠に収まる粒度で示しましょう。
競合は「直接競合」「代替品」「現状維持」の3つから選ぶ
比較対象は同業一覧ではなく、顧客の選択肢から選びます。すると市場の見え方が変わります。
この3つで足ります。競合名を無理に集めるより、顧客がどう迷うかを具体的に書く方が、事業の必然性を示せます。
- 直接競合:同業他社
- 代替品:別の手段で同じニーズを満たすもの
- 現状維持:買わない、自分でやる、先送りする
大手をベンチマークにする場合の注意点
大手を置くなら、価格や品揃えで真っ向勝負しません。勝ち筋は「大手がやりにくい隙間」に置きます。
例:短納期の小ロット、現場密着、個別対応、地域限定の体験価値など。
比較軸もズラします。スペックの優劣ではなく、提供プロセスや顧客接点、運用支援の厚みなどに置くと現実味が出ます。ここが経営の工夫であり、支援の必要性にもつながります。
【制度別】審査員に刺さる「比較軸」の選び方
補助金は制度ごとに評価される優位性の定義が違います。だから同じ比較の書き方を流用するとズレます。設備投資系は数値と再現性、持続化は商圏と体験、ITは業務プロセスが主戦場。自社の申請制度に合わせて比較軸を選ぶだけで、記載の密度が上がり、薄い不安も書きすぎの恐怖も減ります。
ものづくり補助金・省力化投資|「感情」を捨てて「スペック(数値)」で殴る
設備や技術の優位性は、定性語より定量が強いです。
数字を出すときは3点セットで書きます。
- 取得方法:現状の工数、歩留まり、リードタイムを記録
- 計算式:現状値マイナス導入後見込み
- 結果:月間削減時間や不良率低下
専門用語だらけは避け、審査員が理解できる言葉に置き換えるのが大事です。
小規模事業者持続化補助金|スペックではなく「体験・商圏」で棲み分ける
小規模が大手に勝つ軸は体験です。比較は「商圏内で選ばれる理由」に寄せます。
例:予約の柔軟性、提供スピード、相談のしやすさ、地域密着の安心感。
市場は大きく語りすぎず、対象顧客を具体化して書きます。商圏人口や既存顧客数など、把握可能な範囲で十分。長文の地域説明より、導線と販路の作成が評価されます。
IT導入補助金|機能比較ではなく「業務プロセス」の変化で比較する
ITは機能表になりがちですが、審査員が見たいのは導入後の業務フローです。
比較軸はこう置きます。
「他社ツールでは解決できない自社の課題」を先に置き、プロセスがどう短縮され、顧客対応や品質がどう変わるかを具体的に示します。
- 入力、転記、確認の手戻り
- データ連携の有無
- 担当者の属人化の解消
文章より図解!一発で納得させる「比較フレームワーク」
書きすぎを防ぐ最短ルートは、文章量を減らし図解で伝えることです。〇△×表、ポジショニングマップ、ユースケース対比の3つを使えば、比較は短くても具体性が出ます。表の下に結論を3行で固定すると、申請書の項目に収まりやすく、審査員の理解も速いでしょう。
王道の「〇△×表(マトリクス)」と作成のコツ
縦に比較項目、横に自社と他社、代替を置きます。コツは2つです。
1つ目は、自社が◎になる項目を意図的に設定すること。例:納期の安定、運用支援、現場対応など。
2つ目は、他社にも〇を付けてバランスを取ること。全否定は信頼性を落とします。
表は長くしません。項目は最大3つ。経営者が説明できる範囲に絞ります。
空白地帯を見せる「ポジショニングマップ」
2軸で十字を切り、競合が少ない象限に自社を置く方法です。
軸はずらします。高価格と高機能のような王道軸より、汎用性と専門性、標準化と個別最適など、事業の本質が出る軸が有効です。
空白地帯に入ったら、なぜそこに需要があり、なぜ自社が実行できるのかを短く補足します。市場の説明より、実現性の説明が重要です。
顧客視点の「ユースケース(利用シーン)対比」
「他社だと困る場面」を1つだけ切り出し、ストーリーで比較します。
例:繁忙期の急ぎ、現場での変更、複数担当者での引き継ぎ。
困る場面が具体的なら、解決策も具体的になります。最後に「だから投資が必要」と接続すれば、競合比較が自社の計画を強くする道具に変わります。ふと迷ったらこの型に戻ると早いです。
提出前の最終確認|書きすぎ判定チェックリスト10
提出前は、書きすぎを削って勝ち筋を尖らせる時間です。主語が自社か、比較対象が3社または3類型か、形容詞だけになっていないか、結論が投資の必然につながるか。さらに競合を貶める表現がないかも点検します。削る順番を決めれば迷走は止まり、申請の完成度が一段上がります。
チェックリスト10
- 競合説明が自社説明より長くないか
- 比較対象が3社または3類型以内か
- 比較軸が3つ以内か
- 形容詞だけの比較になっていないか
- 根拠が1つ以上あるか(実績、工程差、顧客の声など)
- 全戦全勝の表になっていないか
- 悪口や否定が入っていないか
- 結論が投資の必然に接続しているか
- 課題、施策、効果が一本につながるか
- 読後に一言で説明できるか
削る順番の目安
- まず競合の説明文を削る
- 次に増殖した比較軸を落とす
- 最後に形容詞を根拠へ置き換える
よくある質問(FAQ)
検索の最後に残る不安は、実名の扱い、実績不足、表の要否など細部に集まります。ここを回収すると安心して提出できます。原則は、類型でも成立、実績がないなら経験や試行の結果で補強、表は短くする目的なら有効です。迷ったら、結論を3行に固定してから逆算すると、必要な記載だけが残ります。
競合他社の名前は実名で書くべきですか?
原則は実名の方が信憑性は上がります。ただし特定しづらい場合は、地域や業態で類型化しても構いません。
例:市内同業者A、全国チェーン、汎用ツールなど。
大切なのは、実名の網羅ではなく比較の結論が通ること。競合名を増やすほど、説明が長くなるなら逆効果です。
創業したばかりで比較できる実績がありません
実績がゼロでも根拠は作れます。代表者の過去の経験、テストマーケの結果、試作や実証のデータ、ヒアリング結果などです。
数字を出すときは、取得方法、計算式、結果の順で示します。
例:試験運用で1週間の作業時間を記録し、導入後の短縮見込みを差分で提示。過大に盛らず保守的に置くと信頼性が上がります。
まとめ:競合比較は「相手を倒す」ためではなく「自社を知る」ためにある
競合比較の目的は他社を打ち負かす宣言ではありません。自社の輪郭を明確にし、事業の市場性と実現性を短く伝えるための装置です。3社、3項目、1結論で止め、表と3行結論で仕上げましょう。書きすぎをやめれば、申請書は軽くなり、採択に必要な計画の具体性が前に出ます。次の一歩、行きましょう。
