補助金申請の会社概要は「沿革」を書くな!審査員が評価する“遂行能力”の証明手順【例文つき】

補助金申請の会社概要は「沿革」を書くな!審査員が評価する“遂行能力”の証明手順【例文つき】

目次

1. なぜ「丁寧な沿革説明」は補助金申請で評価されないのか?

会社概要欄で大事なのは歴史の長さではなく、補助事業を最後まで実行できる根拠です。沿革を年表のように丁寧に書いても、体制や資源が見えなければ審査では点になりません。ここで視点を切り替えます。

1-1. 審査員は「過去の事実」ではなく「未来の遂行能力」を見ている

事実として、多くの経済産業省系の補助金は、採択後すぐに全額が入金される仕組みではありません。一般に、交付決定後に発注し、支払いを行い、実績報告を経て補助金が支払われます。
つまり審査側は「計画書が上手い会社」より「計画を実行できる会社」を選びます。ここでいう遂行能力は、次の4点に要約できます。

  • ヒト:実務を回せる人員、責任者、外部協力の有無
  • モノ:設備、拠点、提供体制、製造や施工の手段
  • カネ:資金繰りの見通し、自己負担を含む支払い能力
  • 情報:顧客理解、取引実績、ノウハウ、再現可能な手順

沿革は「いつ創業したか」を示すだけでは弱いです。沿革を使うなら、上の4点が増えた転機として書くと、審査の読み方に合います。

1-2. 「沿革のコピペ」が不採択の原因になるメカニズム

ふと、自社ホームページの会社概要をそのまま貼りたくなります。しかしHPは顧客向けで、情緒や物語が中心になりがちです。一方、申請書は審査員向けで、論理と根拠が中心です。
HPの文章は、次の理由で補助金申請に合いません。

  • 誰に、何を、どのように提供しているかが曖昧
  • 体制が見えず、補助事業の実行イメージが湧かない
  • 形容詞が多く、具体的な強みや証拠が薄い
  • 事業計画との接続がなく、なぜ今それをやるのかが伝わらない

結果として「良い話だが、計画の確実性が読めない」という評価に寄ってしまいます。これは文章力の問題ではなく、ターゲットの違いによるズレです。

2. 評価される会社概要への書き換え「3つの変換公式」

会社概要を強くするコツは、情報を増やすことではありません。沿革などの素材を、審査が見たい形に変換して配置することです。ここでは自社の事実を採択につながる根拠に作成する3つの公式を示します。

2-1. 公式① 資産化:「何をしたか」ではなく「何を持っているか」へ

沿革は「やったこと」の羅列になりがちです。これを「現在の資産」に言い換えます。
例として、次の変換を使います。

  • NG:2019年に法人化、2021年に設備導入
  • OK:法人化を機に受注管理を標準化し、設備導入で納期短縮の体制を確立

ポイントは、出来事の後に「その結果、何が増えたか」を一文で添えることです。増えたものは、技能、工程、顧客、協力会社、品質基準など。これが補助事業の土台になります。

2-2. 公式② 数値化:「形容詞 主観」を「数字 客観」へ

「信頼が厚い」「高品質」「地域密着」は、審査員が事実確認できないため弱い表現です。数字や条件で置き換えると、文章の密度が上がります。
数字を出すときは、できれば次のセットで示します。

  • 取得方法:どの資料や業務記録から拾ったか
  • 計算式:どう集計したか
  • 結果:いくつになったか


取得方法:月次の請求書と顧客台帳を確認
計算式:リピート顧客数 ÷ 取引顧客数
結果:直近12か月のリピート率は約65パーセント

完璧でなくても構いません。大切なのは、具体的で、再現できる計算であることです。

2-3. 公式③ 接続:すべての要素を「今回の補助事業」につなげる

会社概要が独立していると、事業計画書の流れが途切れます。そこで最後に必ず接続します。
接続文の型はこれです。

  • この強み 資産 実績 があるため、今回の補助事業で〇〇を実行できる
  • これまで培った工程 体制 により、計画のスケジュールを現実的に遂行できる

反論として「会社概要に補助事業を書くのはやりすぎでは」と感じる人もいます。とはいえ一文で十分です。むしろ接続がない方が、審査側の理解コストが上がります。

3. 状況 悩み別:「書く実績がない」を解決する構成テンプレート

実績がない、沿革が浅い、小規模事業者で規模が小さい。そんな不安があっても、書き方の順序を変えれば説得力は作れます。ここでは弱点別に、会社概要を成立させるテンプレートを提示します。

3-1. 創業間もない 実績なし:代表者の経歴と準備状況で一点突破

法人の沿革が薄い場合、会社の資産は代表者にあります。次の3点を材料にします。

  • 経験:前職や業界での担当領域、年数、具体業務
  • 準備:試作、モニター、取引打診、協力先確保
  • 実証:小さな受注、テスト販売、試験施工の結果

例文
代表者は同業界で8年、現場管理と原価管理を担当。開業前にモニター3社で試験運用を実施し、見積精度を改善しました。これらの経験と準備により、本補助事業の実施体制を構築済みです。

沿革の代わりに、遂行能力の根拠を先に置くのがコツです。

3-2. 数字が弱い:プロセスと再現性で信頼を勝ち取る

売上や件数が強くないとき、結果の数字だけで勝負すると苦しくなります。そこで、プロセスを具体的に書きます。
具体的とは、誰が何をどの順序で行い、品質や納期をどう守るかが読める状態です。


受注後は、現地確認、仕様確定、工程表作成、資材手配、施工、検収の6工程を標準化。工程ごとにチェック項目を設け、手戻りを抑制しています。

結果が小さくても、再現できる手順が見えると、審査は前向きになります。

3-3. 業種別NG OK例文:飲食 小売 製造 建設のビフォーアフター

ここでは典型例を短く示します。自社の文章に置き換えてください。

飲食

  • NG:地域に愛される味で長年営業してきました
  • OK:常連比率は直近12か月で約6割。仕込み工程を標準化し、提供品質を一定に保つ体制があります。本補助事業で厨房動線を改善し、回転率向上を狙います。

小売

  • NG:幅広い商品を取り扱い、お客様に喜ばれています
  • OK:主力は〇〇で売上の約7割。仕入れ先は3社に分散し欠品を抑制。本補助事業でEC導線を整備し、受注から発送までを省力化します。

製造

  • NG:高品質な製品を作っています
  • OK:検査基準を工程内に組み込み、不良率を月次で管理。設備保全も定期化。本補助事業で加工工程を自動化し、品質維持と生産性向上を両立します。

建設

  • NG:安全第一で施工しています
  • OK:作業手順書とKYミーティングを現場ごとに実施。協力会社との役割分担も固定。本補助事業で測量と写真管理をデジタル化し、報告工数を削減します。

どれも、形容詞ではなく、体制と接続で語っています。

4. 社長から情報を引き出す!担当者向け「深掘りヒアリングリスト」

申請担当者が一番困るのは、社長の頭の中にある強みを文章化できないことです。ここでは聞き方を変えて、具体的な材料を引き出す方法を示します。答えを集めれば、会社概要の骨子が自然にできます。

4-1. 「強みは何ですか?」と聞いてはいけない

強みを直球で聞くと、返ってくるのは抽象語になりがちです。代わりに、次の質問が効きます。

  • 一番利益が出ている商品 サービスは何ですか
  • お客様が選ぶ決め手は何と言われますか
  • クレームが少ない理由はどの工程にありますか
  • 断った仕事は何で、代わりに何を守りましたか
  • 同業他社より早い 遅い工程はどこですか
  • 過去に大変だった案件は何で、どう乗り切りましたか
  • 協力会社に任せない部分はどこですか
  • 設備や道具で一番投資しているものは何ですか
  • 受注から納品までの手順を順番に説明できますか
  • 今回の補助事業で、どの工程がどう変わりますか

質問はエピソードを引き出す設計です。ぽろっと出た固有名詞や数字が、会社概要の核になります。

4-2. 埋めるだけで骨子ができる「資産棚卸しシート」

次の4視点でメモを作成してください。空欄があっても構いません。

  • ヒト:役割分担、資格、経験年数、外部パートナー
  • モノ:設備、拠点、立地、作業環境、ITツール
  • カネ:自己負担の目安、資金調達手段、支払いサイト
  • 情報:顧客層、取引形態、受注経路、ノウハウ、改善履歴

棚卸しが終わると、会社概要は「何を持っているか」を中心に記載でき、沿革の比重を自然に下げられます。

5. 提出前の最終確認!会社概要の「減点回避」チェックリスト

最後に守りを固めます。会社概要は上手く書けても、他の項目と矛盾すると一気に弱く見えます。ここでは形式と内容の両面で、審査の違和感を減らす点検項目をまとめます。読み終えたら、そのまま確認に使ってください。

5-1. 定量面 形式面のチェック 整合性

  • 会社概要の従業員数と、実施体制で書いた人員が一致している
  • 売上や主要事業の説明が、決算書や社内資料と大きく矛盾しない
  • 設備や拠点の説明が、補助事業の実施場所と合っている
  • 文字数や指定様式など、計画書のルールを満たしている
  • 専門用語や略語を多用していない。初見で理解できる

ここでの狙いは、足切りを避けることです。小さな不備は、内容評価の前に印象を落とします。

5-2. 定性面 ストーリーのチェック 納得感

  • 会社概要の強みが、課題 施策 効果の流れとつながっている
  • 補助事業を活用する理由が、自社の資源と矛盾しない
  • 主張には根拠があり、後で説明できる証拠化が可能
  • 文章が長すぎず、一文一意で読みやすい
  • 読み手が3分で事業の全体像をつかめる

擬音で言うなら、読みながら引っかかるコツコツ感を消す作業です。納得感が増えるほど、採択に近づきます。

6. まとめ:会社概要は「履歴書」ではなく「成功の証明書」である

補助金申請の会社概要は、沿革を丁寧に語る場所ではなく、補助事業を実行し成果を出せる根拠を示す場所です。変換公式とテンプレで書き直せば、自社の強みが伝わり、計画の説得力が上がります。今日から直せます。

  • 今日やること1:沿革を転機だけに削り、資産化の一文を添える
  • 今日やること2:形容詞を数字や手順に置き換え、具体的に記載する
  • 今日やること3:最後に補助事業へ接続し、事業計画全体の一貫性を作る

一歩踏み出せば、不安は薄れますし、文章も前に進むでしょう。会社概要が整うと、他の項目も書きやすくなります。未来の採択に向けて、ここから仕上げていきませんか。

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