造園工事業の成功事例8選|補助金活用・DX・保守契約化による収益改善の打ち手
目次
冒頭概要
造園工事業で収益を安定させた事業者に共通するのは、「一工事完結型」から「継続収益型」への構造転換と、デジタルツールによる現場・事務の省力化という二つの軸だ。本記事では、首都圏を中心とする8社の成功事例を、補助金活用の有無・使途・採択の論点まで含めて整理し、自社に置き換えやすい形で示す。
造園工事業は、職人の技術力と現場対応力が収益の源泉である一方、見積・施工・アフターまでの工程が属人的になりやすく、稼働ムラが生じやすい構造を持つ。特に首都圏では、戸建て需要・法人管理需要ともに旺盛だが、職人不足と移動コストが重なって粗利率が伸び悩むケースが多い。
一方、デジタル化・補助金活用・BtoB連携という切り口で先行した事業者は、事務工数の削減と単価改善を同時に実現している。以下の8事例を見ると、「どこに投資したか」よりも「なぜその投資がKPI改善につながったか」という因果が、成功パターンを読み解く鍵になる。
成功事例
東京・世田谷の個人宅造園業:定期保守契約とCRM導入でLTVを改善した例
| 項目 | 内容 |
|---|
| 会社名・個人事業主名 | A社(東京都世田谷区、個人事業主) |
| 切り口 | CRM・会員制度・サブスク化(LTV向上)、アフターサービス・保証拡充、価格戦略・値上げコミュニケーション、ITツール活用(業務効率化・自動化)、口コミ・紹介プログラム |
| 会社概要 | 世田谷区を中心に個人宅の庭園設計・施工を手がける一人親方。創業12年。戸建て富裕層向けの日本庭園・洋風ガーデンを主力とし、年間施工件数は15〜20件。 |
| 当初の課題・挑戦 | 新規工事の受注が年によって大きく変動し、閑散期の収益が安定しなかった。施工後の顧客管理も紙台帳で行っており、定期メンテナンスの案内が漏れるケースが続いていた。顧客単価は高いが一工事完結型のため、LTVが低く安定収益につながらない構造だった。 |
| 取組み・成功のポイント | 既存顧客に対して「年4回定期剪定+緊急対応込みの保守プラン」を設定し、月額換算で提示するというサブスク型への切替えという打ち手を実施。顧客管理にはkintoneを導入し、施工履歴・次回訪問予定・見積履歴を一元化した。紹介制度も整備し、既存顧客からの口コミ獲得率を高めた。保守プランの提案は新規施工完了時の引渡し時に標準化し、成約率が大幅に上昇した。 |
| 成果・今後の展望 | 保守契約顧客数は導入2年で18件に拡大し、継続更新率は90%超。閑散期の売上下落幅が半減し、年間粗利率が約3pt改善。今後は法人施設への保守提案にも展開予定。 |
| 補助金・助成金 | 補助金活用あり。参考となる制度:小規模事業者持続化補助金等が想定される。使途:顧客管理システム(kintone)初期設定費・保守プラン提案用リーフレット制作。採択の論点:既存顧客の継続取引化と販路開拓によって売上の安定化と生産性改善を示すこと。 |
| リンク先 | 参考:中小企業庁 持続化補助金事例/建設業での活用方法 |
神奈川・横浜の造園会社:管理会社との法人提携とITツール連携で稼働率を改善した例
| 項目 | 内容 |
|---|
| 会社名・個人事業主名 | B社(神奈川県横浜市、法人、従業員5名) |
| 切り口 | 販路開拓・営業活動、CRM・会員制度・サブスク化(LTV向上)、ITツール活用(業務効率化・自動化)、生産性向上、価格戦略・値上げコミュニケーション |
| 会社概要 | 横浜市内のマンション・商業施設の植栽管理を中心に展開。創業18年。公共・法人向けが売上の約60%を占め、戸建て工事も並行して受注。 |
| 当初の課題・挑戦 | 法人顧客との受注はあるが、各物件の作業記録が担当者の手書きメモに依存しており、次回作業の抜け漏れや顧客からのクレームが発生していた。稼働率も月によって30%程度変動しており、人員の計画配置ができなかった。 |
| 取組み・成功のポイント | 施工管理SaaS(ANDPAD)の導入という打ち手により、物件ごとの作業履歴・写真・次回予定をクラウド上で一元管理。管理会社の担当者にも閲覧権限を付与し、報告書の郵送工数をゼロにした。これにより管理会社との信頼が高まり、新規物件の紹介数が増加。年間契約の定期管理物件数が拡大し、稼働の平準化に成功した。 |
| 成果・今後の展望 | 定期管理物件数は2年で22棟→34棟に増加。事務工数は月あたり約40%削減。現在は近隣区の管理会社への提案活動を展開中。 |
| 補助金・助成金 | 補助金活用あり。参考となる制度:IT導入補助金等が想定される。使途:施工管理SaaS(ANDPAD)の初期費用・導入支援費。採択の論点:現場管理の電子化により事務工数を削減し、労働生産性の向上と顧客満足度改善を示すこと。 |
| リンク先 | 参考:IT導入補助金公式/建設業DX事例 |
埼玉・川口の造園工事業者:省力化投資補助金を活用した施工管理アプリ導入で現場工数を削減した例
| 項目 | 内容 |
|---|
| 会社名・個人事業主名 | C社(埼玉県川口市、法人、従業員8名) |
| 切り口 | ITツール活用(業務効率化・自動化)、生産性向上、リーン/カイゼン・5S、補助金活用、標準化・マニュアル化 |
| 会社概要 | 川口市を拠点に公共緑地・道路植栽・個人宅造園を手がける中小造園業者。外構工事も併設し、売上構成は公共6割・民間4割。 |
| 当初の課題・挑戦 | 現場での日報作成が紙ベースで、帰社後に事務所で転記する二重作業が常態化していた。1件あたりの日報処理に平均40分を要しており、残業時間の主因となっていた。また現場写真の管理が担当者のスマートフォンに散在し、引き継ぎ時の情報共有が難しかった。 |
| 取組み・成功のポイント | タブレット導入+施工管理アプリ(Photoruction)による現場日報のリアルタイム入力という打ち手を展開。帰社後の転記作業を廃止し、写真と報告を現場完了時に完結させる運用に切り替えた。標準化されたチェックリストをアプリ上に設定し、作業品質のばらつきも抑制。ICT施工の実績は公共工事入札でも評価加点の対象となった。 |
| 成果・今後の展望 | 1件あたりの日報処理工数は40分→15分に短縮(事務工数▲62%)。月間残業時間が平均18時間削減。今後は工事写真台帳の自動生成機能も活用し、完工書類作成の省力化を進める予定。 |
| 補助金・助成金 | 補助金活用あり。参考となる制度:省力化投資補助金(一般型)等が想定される。使途:タブレット端末・施工管理アプリ(Photoruction)の導入費。採択の論点:現場日報の電子化により事務工数を削減し、労働生産性の向上と人材不足への対応策を数値で示すこと。 |
| リンク先 | 参考:省力化補助金・建設業事例 |
千葉・船橋の造園業者:InstagramとGoogleビジネスプロフィールの活用で新規問い合わせを増やした例
| 項目 | 内容 |
|---|
| 会社名・個人事業主名 | D社(千葉県船橋市、個人事業主) |
| 切り口 | 広告宣伝(デジタル)、ITツール活用(集客・広告宣伝)、口コミ・紹介プログラム、コミュニティ形成・UGC/レビュー・SNS運用、補助金活用 |
| 会社概要 | 船橋市を中心に個人宅の外構・植栽工事を展開する一人親方。創業6年。口コミと地域チラシを中心に集客してきたが、年間新規問い合わせは月平均2〜3件に留まっていた。 |
| 当初の課題・挑戦 | 施工品質には自信があるが、認知経路がほぼ口コミ限定で、繁忙期と閑散期の差が大きかった。ウェブ上の存在感がなく、Googleマップへの登録さえ未整備の状態で、近隣の競合に検索で埋もれていた。 |
| 取組み・成功のポイント | Googleビジネスプロフィールの整備・施工前後写真の定期投稿、Instagramでの施工事例発信という打ち手を組み合わせた。施工完了後に顧客へのGoogleレビュー依頼を標準化し、半年で口コミ件数が4件から28件に増加。持続化補助金でLP制作と広告配信も実施し、問い合わせ導線を整備した。 |
| 成果・今後の展望 | 月平均問い合わせ数が2件→9件に増加。閑散期にも月2件以上の受注を確保できるようになった。現在はリスティング広告の継続運用とInstagramフォロワーの育成を進めている。 |
| 補助金・助成金 | 補助金活用あり。参考となる制度:小規模事業者持続化補助金等が想定される。使途:LP(施工事例掲載サイト)制作費・Google広告配信費。採択の論点:デジタル集客導線の整備により新規顧客獲得数を増やし、売上と労働生産性の改善を示すこと。 |
| リンク先 | 参考:小規模事業者持続化補助金 活用事例/建設業での補助金活用 |
東京・調布の造園会社:ガーデンリフォーム新サービスの立ち上げで平均単価を改善した例
| 項目 | 内容 |
|---|
| 会社名・個人事業主名 | E社(東京都調布市、法人、従業員4名) |
| 切り口 | 新商品・新サービス、価格戦略・値上げコミュニケーション、商品ミックス/メニューエンジニアリング、ブランディング/リブランディング、接客・サービス |
| 会社概要 | 調布市・三鷹市を中心に戸建て庭園の施工・維持管理を手がける。創業20年の地域密着型造園業者。施工単価は業界平均程度だが、維持管理単価が低いことが収益の課題だった。 |
| 当初の課題・挑戦 | 顧客の高齢化が進む中、「庭を持て余している」という声が増えていた。一方で、庭を「使える空間」に変えたいという潜在需要は大きいと感じながらも、提案の型がなく、単価は低いままだった。 |
| 取組み・成功のポイント | 「ガーデンリフォーム」という新カテゴリを立ち上げ、ウッドデッキ・砂利敷き・雑草対策グランドカバー植栽をパッケージ化するという打ち手を実施。既存の維持管理顧客への提案書を標準化し、引渡し後の訪問メンテナンス時に提案を行う仕組みを整えた。施工事例写真と「Before/After」比較をサービスパンフレットに落とし込み、単価の価値訴求を強化した。 |
| 成果・今後の展望 | ガーデンリフォーム案件の平均単価は従来の庭園工事比で約25%高い水準を確保。受注比率は立ち上げ1年で全体の約18%に到達。今後は撤去・建て替え需要もメニュー化し、単価構成のさらなる改善を目指す。 |
| 補助金・助成金 | 未活用。今後の候補:小規模事業者持続化補助金。使途例:ガーデンリフォームサービスのパンフレット・LP制作、施工事例写真撮影費。採択の論点:新サービスの販路開拓と単価改善を通じた売上・粗利率の向上を示すこと。 |
| リンク先 | 参考:J-Net21 造園工事業 |
大阪・堺の造園業者:農福連携と園芸療法サービスへの新事業進出で多角化を実現した例
| 項目 | 内容 |
|---|
| 会社名・個人事業主名 | F社(大阪府堺市、法人、従業員6名) |
| 切り口 | 新規事業・多角化、事業連携、新商品・新サービス、補助金活用、サステナビリティ/脱炭素 |
| 会社概要 | 堺市を拠点に公共緑地・公園整備・個人宅施工を手がける造園業者。創業28年。公共工事への依存度が高く、景気・予算動向による受注変動がリスクだった。 |
| 当初の課題・挑戦 | 公共工事の入札競争が激化し、単価が年々低下。民間新規顧客の獲得にも限界を感じていた中、地域の福祉施設から「農園・庭づくりで利用者の就労支援をしたい」という相談が持ち込まれた。既存の技術を社会課題解決に結びつける新事業の可能性を模索していた。 |
| 取組み・成功のポイント | 障害福祉施設と連携し、園芸療法プログラムの設計・施設内農園の整備・定期指導という打ち手を組み合わせた新事業を立ち上げた。造園技術を「緑の空間づくり」から「福祉・健康への活用」へと転換。新事業進出補助金を活用して初期設備投資を抑え、プログラム設計・研修費に充てた。地域NPOとの連携による利用者紹介ルートも構築した。 |
| 成果・今後の展望 | 農福連携・園芸療法事業の売上は初年度で全体の約12%を占める規模に成長。受注先の多様化によりリスク分散も実現。今後は複数施設への横展開を計画中。 |
| 補助金・助成金 | 補助金活用あり。参考となる制度:新事業進出補助金等が想定される。使途:福祉施設内農園整備費・園芸療法プログラム設計委託費・担当人材育成研修費。採択の論点:既存の造園技術を活用した新市場進出として、新規売上比率の向上と付加価値創出を示すこと。 |
| リンク先 | 参考:建設業「新事業進出補助金」採択事例 |
愛知・名古屋の造園業者:現場マニュアル化と技能継承で手戻り工数を削減した例
| 項目 | 内容 |
|---|
| 会社名・個人事業主名 | G社(愛知県名古屋市、法人、従業員10名) |
| 切り口 | 標準化・マニュアル化、人材活用・採用・育成、生産性向上、品質・安全・認証、リーン/カイゼン・5S |
| 会社概要 | 名古屋市内の法人施設・商業施設の植栽管理・公園整備を主力とする造園業者。2代目に事業承継後、職人の高齢化と若手育成が経営課題となっていた。 |
| 当初の課題・挑戦 | 熟練職人3名に作業の大半が集中しており、若手が独立して作業できる工程が限られていた。手戻りやクレームの7割が若手現場での仕上がりムラに起因しており、再施工コストが年間売上の約4%を占めていた。 |
| 取組み・成功のポイント | 主要工程(剪定・植栽・排水勾配調整)ごとに写真付きマニュアルを作成し、タブレットで現場参照できる環境を整備するという打ち手を実施。チェックリストに沿った作業確認を全員に義務付け、完了後の写真提出を標準化した。熟練職人が動画でポイントを解説する「社内ナレッジ動画」も20本以上整備し、技能継承の仕組みを構築した。 |
| 成果・今後の展望 | 再施工・手戻り発生率が1年で約45%低下。若手の独立稼働件数が増加し、熟練職人への集中が解消された。今後はマニュアルの動画化をさらに進め、採用後60日での独立稼働を目標に据えている。 |
| 補助金・助成金 | 未活用。今後の候補:小規模事業者持続化補助金、IT導入補助金。使途例:タブレット端末・社内ナレッジ動画制作・マニュアル整備費。採択の論点:現場標準化と技能継承の仕組み構築により、品質改善と生産性向上を示すこと。 |
| リンク先 | 参考:DX推進優良事例集 |
東京・八王子の造園会社:3代目承継とSNSブランド刷新で単価と新規顧客数を同時改善した例
| 項目 | 内容 |
|---|
| 会社名・個人事業主名 | H社(東京都八王子市、法人、従業員7名) |
| 切り口 | 事業承継、ブランディング/リブランディング、広告宣伝(デジタル)、コミュニティ形成・UGC/レビュー・SNS運用、価格戦略・値上げコミュニケーション |
| 会社概要 | 八王子市・相模原市を商圏とする老舗造園業者。創業45年の3代目が承継後、デザイン性の高いガーデニングにシフトし、施工単価の引き上げを模索していた。 |
| 当初の課題・挑戦 | 先代までの「剪定・草刈り中心」のイメージが定着しており、デザイン提案型の高単価案件が取れなかった。既存顧客の単価が低く、若い世代の新規顧客層にもリーチできていなかった。WEBサイトは10年以上更新されておらず、施工事例の見せ方も古かった。 |
| 取組み・成功のポイント | ブランドコンセプトを「暮らしに緑を設計する」と再定義し、サイトリニューアル・InstagramでのBefore/After施工事例投稿・Pinterest活用によるデザインポートフォリオ公開という打ち手を組み合わせた。施工事例ごとに設計意図・使用植材・施工期間を丁寧に記載し、単価の価値説明を視覚化。SNS経由の問い合わせに対しては、初回ヒアリングシートを整備し、上質な顧客との成約率を高めた。 |
| 成果・今後の展望 | SNS経由の問い合わせが月0件→月6件に増加し、そのうち高単価案件(50万円超)の成約率は40%を超えた。平均単価は承継前比で約22%上昇。今後は施工事例の動画コンテンツ化とYouTube展開を検討中。 |
| 補助金・助成金 | 未活用。今後の候補:小規模事業者持続化補助金、東京都中小企業振興公社「事業承継を契機とした成長支援事業」。使途例:WEBサイトリニューアル・施工事例撮影費・SNS広告配信費。採択の論点:事業承継を機にブランドを刷新し、新規顧客獲得と単価改善を通じた売上・労働生産性の向上を示すこと。 |
| リンク先 | 参考:東京都中小企業振興公社 事業承継支援 |
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