補助金の採択率の正しい読み方|「高い=簡単」ではない理由と損をしない判断基準

補助金の採択率の正しい読み方|「高い=簡単」ではない理由と損をしない判断基準

目次

結論|採択率は「合否の予言」ではなく「その回の競技レベル」

結論から言うと、補助金の採択率は自社の当選確率ではありません。数字は、その回の申請者の質、予算、枠の設計が作った結果です。まず前提を揃え、次に変動要因を分解し、最後に自社の勝ち筋へ落とす。ここまでやれば不安がスッと軽くなるでしょう。

  • 採択率だけで制度を選ばない
  • 比較は同一制度、同じ枠、同じ回次を基本にする
  • 採択率以外の難易度も必ず見る

この記事の対象

中小企業向けの経済産業省系の補助金と、東京都など自治体系の助成金を中心に解説します。厚労省系の助成金や個人向けの制度は主役にしません。

採択率を正しく読むための基本定義と「3つの誤解」

採択率の議論でつまずく原因は、言葉のズレです。採択率は採択数を申請数で割った比率ですが、分母には申請者の質や不備が混ざります。また「採択」と「交付決定」を混同すると、発注や支払の順番で損が出ます。最初に定義と誤解を片づけましょう。

採択率の計算式と分母の見方

取得方法:公募の採択結果や事務局の公表資料から、申請数と採択数を拾います。

計算式:採択率 = 採択数 ÷ 申請数

結果:同じ50%でも、分母が「強い申請者だらけ」なら体感難易度は上がります。つまり数字より分母の中身が大事です。

要注意|採択と交付決定は別

採択は「採択された」という通知で、交付決定は「事業を実施してよい」という許可です。採択前後の段階を飛ばして契約や発注を進めると、補助対象外になることがあるので要注意。ここを押さえるだけで、失敗の芽が減ります。

罠その1|採択率が高いほど要件が厳しい場合がある

採択率が高い理由が、簡単だからではなく「申請できる事業者が少ない」こともあります。対象者の制限、対象経費の細かさ、自己負担の重さが強いほど分母が絞られ、数字だけが上がることがあるのです。

罠その2|枠や加点が平均を押し上げる

特別枠や加点が強い制度は、枠ごとに別ゲームになります。加点を取れる事業者が採択率を引き上げ、加点がない事業者は置いていかれる。平均採択率だけを見て安心すると、チクッと痛い目に遭います。

罠その3|採択率が低いから無理と決めるのも早い

政策目的に合致し、事業計画が具体で、必要書類が揃っていれば逆転は起こります。採択率が低い回ほど審査が厳格になり、書類の完成度が合否を分ける傾向もあります。低い数字は、準備の深さを求めるサインだと捉えましょう。

採択率を「使える判断材料」に変える3ステップ

採択率は使い方を間違えると毒、正しく使えば薬です。ポイントは、比較条件を揃え、変動要因を棚卸しし、自社の勝ち筋に変換すること。数字に振り回されず、申請するか見送るかを決めるための型を示します。さて、ここからが実務の本番です。

ステップ1|比較条件を揃える

まず同一制度の中で、同じ枠、同程度の要件、同じ回次を基本に比べます。制度が違えば目的も審査観点も違うので、横比較は原則しません。どうしても比較するなら、後述の4指標で補助線を引きます。

ステップ2|変動要因を棚卸しする

取得方法:公募要領、採択結果、説明資料、過去回の公表情報を確認します。

計算式:採択率は結果なので、要因を分解して仮説を立てます。

結果:回次の申請集中、予算配分、形式不備の増減、流行テーマの影響が見えてきます。ふむふむ、と納得しやすくなります。

ステップ3|自社の勝ち筋に落とす

加点の有無、準備期間、投資規模、実施体制を照らし合わせます。採択率が高い回でも、準備が浅いなら危険です。逆に採択率が低くても、政策テーマ適合と実行計画が強ければ勝機はあります。

採択率だけでは見えない「本当の難易度」を測る4つの指標

採択率は入口の指標にすぎません。現場で詰まるのは、申請負荷、要件の硬さ、競争相手、採択後の実績対応です。ここを見ないと、採択しても実施できない、入金まで耐えられない、という悲劇が起こりえます。数字の奥にある負荷を可視化しましょう。

指標1|申請負荷

書類量、添付、見積、体制構築、事業計画の作成難度を見ます。申請が軽い制度は再挑戦しやすい一方、重い制度は一発勝負になりがち。支援を受けるか自力で対応するかも、この段階で判断します。

指標2|要件の硬さ

対象者の条件、補助対象経費の範囲、自己負担率、事業期間の制約を確認します。要件が硬いほど準備に時間がかかり、ちょっとしたズレで対象外になりえます。採択率が高くても油断できません。

指標3|競争相手の質

同業の投資規模、実績、差別化のレベルを想像します。採択率が高い回でも、強者が集中すれば勝率は下がります。逆にニッチな業種やテーマで、事業の必要性が伝わると勝てることもあります。

指標4|採択後のリスク

交付決定前の発注、実績報告の証憑、納品や検収、入金までの立替期間が壁になります。取得方法:公募要領の手続きフローを読む。計算式:立替期間 = 支払日から入金日まで。結果:資金繰りへの影響が見えます。

経産省系と東京都助成金で変わる「数字の裏側」

採択率の意味は、制度の目的と審査観点で変わります。経産省系は枠や類型、加点で数値が偏りやすく、平均採択率だけでは判断がブレます。一方、東京都など自治体系は政策目的への合致や新規性の比重が大きく、数字だけでは勝ち筋が見えにくいのが特徴です。

経産省系|平均採択率に意味がない場面

たとえば、ものづくり、持続化、IT導入などは、枠や類型で審査の前提が変わります。特別枠が平均を押し上げると、通常枠の事業者は体感が一致しません。見るべきは「自社が出す枠の採択率」と「要件の適合」です。

東京都など自治体系|低採択率でも逆転する理由

自治体系は地域性や新規性、政策との一致が重視されがちです。採択率が低くても、目的に合う事業計画を作成できれば戦えます。逆に、目的がズレた計画は、数字がどうでも落ちやすい。ここはキリッと割り切りましょう。

よくある誤読例

持続化で「採択率が高いから簡単」と早合点し、事業計画が薄くて落ちる。ものづくりで「設備だけ」を語り、審査が求める事業の必要性が弱くて落ちる。IT導入で要件や手続きの対応を甘く見て、申請不備になる。数字より手順が大切です。

「採択率90%以上」の広告に惑わされない見極め質問

採択率の不安は、支援者選びにも直結します。高い採択率の表示は心強い反面、分母の定義次第でいくらでも盛れます。ここでは面談で聞くべき質問を用意し、ミスマッチを防ぎます。うっかり信じてしまう前に、サクッと確認しましょう。

質問1|採択率の分母は何か

対象制度、期間、枠、地域、どこまでを母数にしているかを確認します。通りやすい案件だけを引き受けている可能性もあります。回答が曖昧なら要注意。数字が美しいほど、裏側を聞きたくなります。

質問2|自社条件に近い実績はあるか

業種、規模、加点の有無、投資内容が近い事業者の実績を聞きます。一般論だけでなく、どんな審査の観点で勝ったのかが語れる支援者は強いです。支援の質は、具体の深さに出ます。

質問3|不採択時の原因分析と再申請支援はあるか

不採択は珍しくありません。必要なのは、審査で弱かった点の言語化と改善の作成支援です。再申請までの対応範囲が明確なら安心材料になります。反対に、断言だけが多いときは慎重に。

3分診断|自社の「実質勝率」を確認するチェックリスト

最後に、採択率の読み方を行動へ変えます。枠や回次、審査方式を把握し、自社の加点や準備体制、資金繰り、実績対応までを確認します。10項目に丸を付けるだけで、今すぐ進めるか、準備して次回か、制度変更かが見えてきます。カチッと判断しましょう。

チェック項目

  • 公募の枠と類型を特定できている
  • 直近回の採択結果を確認した
  • 申請要件と対象経費を説明できる
  • 事業計画の骨子がある
  • 加点に該当する要素がある
  • 見積と体制が揃っている
  • 証憑や実績の出し方がイメージできる
  • 交付決定前に発注しない運用にできる
  • 立替期間に耐える資金繰りがある
  • 不採択時の改善プランを用意できる

判定の読み方

  • 丸が多い:申請へ進む。足りない点を補強して提出。
  • 中くらい:準備を優先し、次回で勝つ。
  • 少ない:制度や枠の再選定、支援の活用を検討。無理に突っ込まないのが賢いです。

まとめ|採択率を「戦略の地図」として使いこなす

採択率の数字だけで判断してしまうのは、よくある誤解の一つです。
👉 補助金のよくある誤解Q&A20

採択率は、難易度そのものではなく環境を映す鏡です。前提を揃え、変動要因を分解し、自社の条件で勝ち筋を作る。さらに申請負荷や要件、実績対応まで見れば、数字に一喜一憂しなくて済みます。次は、候補制度の公募を確認し、準備に着手していきましょう。

今日やること

  1. 候補制度の枠と回次を特定する
  2. 4指標で負荷とリスクを確認する
  3. チェックリストで次の一手を決める
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