補助金は税金がかかる?会計処理・税務の基本と「手残りを最大化する」圧縮記帳の考え方
結論:補助金は「魔法のお金」ではない
補助金は原則、企業に入る経済的利益として「収益(雑収入など)」に計上され、法人税・所得税の課税対象になり得ます。まず“税金がかかる前提”で手残りを見積もると、決算前の焦りが消えます。
最初に押さえる3点(ここだけ覚えれば迷いにくい)
- 税金:補助金は多くのケースで利益計算に入る(課税対象になり得る)
- 会計処理:勘定科目は「雑収入(補助金収入の補助科目)」が実務で多い
- 圧縮記帳:固定資産に使った補助金で検討。節税ではなく“課税の繰延”です
この記事の対象(スコープ)
- 主に 経産省系の補助金(例:小規模事業者持続化補助金、ものづくり補助金、IT導入補助金等)
- 自治体系の助成金(例:東京都の創業助成金等)
※厚労省系の助成金や個人向け補助(リフォーム等)は本筋として扱いません。
なぜ「支援」なのに税金がかかる?経営者が納得すべき会計のルール
補助金と税金の関係は、「もらったら得」という思い込みから誤解されやすい論点です。
👉 補助金のよくある誤解Q&A20
補助金は“助け舟”でも、会計では会社の利益(益金)に近い性質として扱われやすい仕組みです。ここで納得できると、雑収入・計上時期・圧縮記帳の理解が一気につながります。
「国からもらったのに3割取られる?」のモヤモヤを整理
- 事実:補助金は事業の実施に対して支給され、会社の資金が増える
- 一般的見解:資金が増える=利益計算に影響し得る、というのが会計の基本
- 反論→再説明:「支援なのに納税?」→“支援=非課税”ではなく、税は利益にかかるルールです
“後出しジャンケン”を避けるのが最大の目的
補助金は金額が大きいことが多く、入金後に税負担が発生すると資金繰りが急に苦しくなります。だからこそ、早い段階で「税金がかかる可能性」を織り込むのが安全でしょう。
会計処理の基本ステップ1:勘定科目は「雑収入」でOK
補助金の勘定科目は、実務では「雑収入」で処理するケースが多いです。売上に混ぜると本業の実力が見えにくくなるため、補助金は補助金として“分けて管理”するのが得策です。
原則:雑収入(必要なら「補助金収入」の補助科目)
- 方法:勘定科目は雑収入、内訳で「補助金収入」を作る
- 目的:本業売上との混在を避け、金融機関や社内の説明が楽になる
- 必要:補助金ごとに、交付決定・確定通知・支給金額が追える状態
「売上」に入れないほうがいい理由(経営・信用の面)
- 売上が膨らむと、粗利率や販管費率などのKPIが歪みます
- 「売上増=本業好調」と誤解されると、社内判断もズレがちです
ふと見返したときに“数字が語る物語”を壊さないためにも、雑収入は便利です。
会計処理の基本ステップ2:最大の地雷「計上時期」はいつ?
補助金の計上は「入金日」と決め打ちすると事故りやすいです。原則は“金額が確定したタイミング”が論点になり、年度またぎでは未収入金の計上が必要になる場合もあります。
よくある誤解:通帳に入った日=計上日、ではない
- 事実:会計は発生主義の考え方がベース
- 一般的見解:補助金は「確定通知」などで金額が固まるタイミングが重要
- 再説明:入金が遅れても、確定していれば当期の利益に影響することがあります
判断の軸(交付決定/確定通知/入金のどこを見る?)
結論から言うと、“どの書類で金額が確定したか” が鍵です。交付決定はまだ条件付きのこともあり、実績報告後の確定通知で金額が確定する流れが多い…という感覚を持つと迷いにくいでしょう。
年度またぎの典型パターン:未収入金が絡む
- 当期:補助金が確定 → 未収入金(資産)を立てる可能性
- 翌期:入金 → 未収入金が消える
このズレが「現金がないのに税金が増える」不安の正体です。
【ケース分岐】あなたの補助金はどれ?「使途」で変わる税務の着地点
補助金名より「何に使ったか」で税務の着地点が変わります。固定資産か、経費か、創業期の赤字か。ここを先にセルフ分類すると、圧縮記帳や仕訳の迷路から抜け出せます。
パターン1:機械・設備・ソフト等「固定資産」に使った場合
ものづくり補助金、IT導入補助金(資産計上分)などが代表例です。固定資産は減価償却があるため、補助金収入と費用のタイミングがズレやすく、圧縮記帳を検討する価値が出ます。
パターン2:販促・外注費・広告費など「経費」に使った場合
小規模事業者持続化補助金の販促費などはこのイメージです。経費は当期に落ちやすい一方、補助金収入も利益に乗るため、最終的な利益の見え方を整理しておくと安心できます。
パターン3:創業助成金など「赤字」の状態で受け取った場合
赤字なら税金が出ないケースもありますが、結論を急ぎすぎるのは禁物です。翌期への影響や、法人・個人の条件で変わるため、ここは“安全側の見積もり”が賢明です。
手残りを守る「圧縮記帳」の考え方:税金を“消す”のではなく“先送り”する
圧縮記帳は、固定資産に対する補助金で検討される代表的な手当てです。とはいえ節税の魔法ではなく、将来の減価償却費が減ることで“いつか回収される”仕組みだと理解しましょう。
圧縮記帳のイメージ(ざっくり)
- 取得方法:補助金で買った固定資産の取得価額を見直す
- 計算式:圧縮後取得価額=取得価額 −(補助対象相当額など)
- 結果:当期の利益を押し下げ、当期の税負担を軽くし得る(ただし将来は増え得る)
反論→再説明:「今期の税金が減るなら最高?」
それでも、将来の税負担が増える可能性があります。資金繰り重視の年は助かる一方、将来の利益計画も踏まえて判断するのが大人の選び方です。
方式比較:直接減額方式 vs 積立金方式
圧縮記帳には代表的に2方式があり、どちらが得かはケースで変わります。選ぶ基準は「管理のしやすさ」「数字の見え方」「将来の説明のしやすさ」。背伸びせず扱える方法が結局強いです。
直接減額方式:シンプルでB/Sがスッキリする
固定資産の帳簿価額を直接下げるため、処理が直感的です。会計ソフトの運用も比較的シンプルで、経理担当が少人数の企業に向きます。
積立金方式:資産の“見た目”を残しつつ管理する
資産の取得価額は残しつつ別枠で調整する考え方です。理屈は整いますが管理が複雑になりがちで、運用体制がある企業向けでしょう。
「どっちが得?」への短い答え
短期のキャッシュ重視なら直接減額が分かりやすいことが多いです。とはいえ、税務申告や決算書の見せ方の方針で変わるので、最後は税理士と握るのが安全です。
実務で使える「仕訳テンプレ」3つの型
仕訳は“正しさ”以上に“説明できる一貫性”が大切です。ここでは典型3パターンを示します。会計ソフトでも手書きでも考え方は同じ。迷ったら型に戻るのが近道です。
型1:交付決定(金額確定)時に「未収入金」を立てる仕訳(例)
借方:未収入金/貸方:雑収入
「確定したが、まだ入金していない」を表します。ここが年度またぎの核心です。
型2:実際に入金があった時の仕訳(例)
借方:普通預金/貸方:未収入金(または雑収入)
未収を立てている場合は相殺、立てていない場合は雑収入へ。社内ルールを統一しましょう。
型3:圧縮記帳(直接減額方式)の仕訳(概念例)
借方:固定資産圧縮損/貸方:固定資産
“取得価額を圧縮する”方向のイメージです。実際の科目や処理は税理士・会計方針に合わせてください。
よくある落とし穴:消費税と補助金のデリケートな関係
補助金そのものに消費税がかかるわけではありません。一方で、補助金で買ったものの仕入税額控除などが絡むと、後から調整や返還が必要になるケースがあります。ここは誤解が多いので要注意です。
補助金は不課税でも、別の論点が出る
- 事実:補助金に消費税が上乗せされるわけではない
- 一般的見解:仕入税額控除の考え方が絡むと「返還」論点が出る場合がある
- 再説明:補助金=消費税OK/NGの結論ではなく、購入側の処理が問題になります
「消費税仕入税額控除の返還」が話題になる場面
ざっくり言うと、“控除しすぎ”と判断されると調整が必要になることがあります。ここは制度や条件で変動しやすいので、該当の可能性がある時点で税理士へ相談するのが無難です。
決算前チェックリスト:税理士に相談すべき5つのポイント
決算直前にバタつく原因は、論点の置き忘れです。ここでは「種類」「確定」「使途」「年度またぎ」「圧縮記帳」を5点セットで確認します。チェックが揃うと、税理士との会話が一気に進みます。
5つの確認ポイント(コピペ用)
- 補助金の制度名/支給(入金)予定日/金額
- 確定通知(または確定に準ずる書類)の有無と日付
- 使途:固定資産か、経費か(対象の内訳)
- 年度またぎ:当期に未収入金を立てる必要があるか
- 圧縮記帳:適用の可否と、方式(直接減額/積立金)の方針
【特典】そのまま送れる「税理士への確認メール」テンプレ
迷いを言語化できないと、相談は長引きます。下のテンプレで必要情報を一気に渡せば、回答が早く、ミスも減ります。気まずさゼロで送れる文面にしてあります。
メールテンプレ(件名+本文)
件名:補助金の会計処理(計上時期・未収入金・圧縮記帳)確認のお願い
本文:
補助金の会計処理について確認させてください。
制度名:____(例:ものづくり補助金/IT導入補助金等)
金額:____円、確定通知:有/無(日付:____)
入金予定:____、当期決算日:____
使途:固定資産/経費(内訳:____)
質問:①当期に計上が必要か(未収入金計上の要否)②勘定科目の推奨③固定資産の場合、圧縮記帳の可否と方式、概算の影響をご教示ください。
まとめ:正しい会計処理で「実質の手残り」を最大化しよう
補助金は入金がゴールではなく、正しい計上と申告で初めて“事業の武器”になります。雑収入・計上時期・圧縮記帳を押さえれば、税務調査の不安も資金繰りの焦りも減ります。次は自社のケースに当てはめ、未来の一手を打ちましょう。
