「補助金ありき」の投資はなぜ失敗する?社長のための5つのGo/No-Go診断
なぜ「補助金ありき」の設備投資は会社を潰すのか?
結論はシンプルです。補助金を目的にすると、投資判断の軸がぶれてROI計算が歪みます。結果としてキャッシュフローが悪化し、現場も混乱しやすい。ここでは中小企業が陥りがちな3つの失敗型を先に押さえ、冷静な経営判断の土台を作ります。
失敗型①【オーバースペック病】身の丈に合わない「宝の持ち腐れ」
「補助金で半額なら上位機種にしよう」。この一言が設備投資を膨らませます。設備の稼働率が上がらないと、固定資産税や減価償却費だけが毎年残り、利益をじわじわ削ります。判断のコツは、自社の受注量と人員で回せる上限を先に置くこと。例えば月の必要生産量、段取り時間、保全工数を棚卸しし、設備が増やすのは能力か固定費かを見ます。「買えば成長」ではなく「回せて初めて成長」です。
失敗型②【ベンダー主導の罠】「対象だから」でツールを選んでしまう
IT導入補助金などでは、制度の対象かどうかが先に立ちやすい。すると支援会社やベンダーの提案が主導し、課題解決より申請が優先されます。結果は「誰も使わないシステム」と「毎月の保守費」。対策は、導入前に業務フローを紙で描き、改善したい工程を一つに絞ることです。目的が明確なら、対象ツールの中からでも適切な選定ができます。補助金は後押しであって、要件が要件を呼ぶ構造に飲まれないことが必要でしょう。
失敗型③【ランニングコスト地獄】導入後の「見えない赤字」
補助金は初期費用に効く一方、運用コストは基本的に自己負担です。電気代、材料、クラウド月額、更新料、教育の人件費が積み上がると、導入後に利益が落ちます。ここは数字で潰します。取得方法は、見積書と契約書から月額費用を抜き出し、現場の運用工数は担当者ヒアリングで見積もる。計算式は、月額費用+工数時間×時給換算。結果として「補助金で得したはずが毎月赤字」という事故を防げます。
社長、そのハンコを押す前に!投資判断「5つのGo/No-Go診断」
ここが本題です。営業トークや空気ではなく、5つの質問で投資を判定します。1つでもNoなら、いったん立ち止まるのが賢明です。補助金の活用は悪ではありませんが、判断の順番を誤ると資金繰りと事業計画が壊れます。迷いを言語化し、社内にも説明できる形にしましょう。
Q1. もし補助金が「0円」でも、その投資を実行しますか?
この問いにYesと言えない投資は危険です。補助金があるから成立する計画は、制度変更や不採択で崩れます。逆に、定価でも必要で採算が合うなら、補助金は利益を押し上げるボーナスになります。判断のポイントは、投資目的が「課題解決」か「割引の魅力」か。前者なら進める価値があり、後者なら見送りが合理的です。ふと「補助金がなくてもやるか?」と自問すると、答えは驚くほど明確になります。
Q2. 入金が「1年半後」でも、資金ショートしない確証はありますか?
補助金は後払いになりやすく、採択後も支出が先行します。ここは資金繰り表で確認します。取得方法は、支払予定日を見積・契約から拾い、入金時期は制度の一般的な流れを前提に幅を持たせる。計算式は、月末現金=前月現金+入金-支出。結果として、最低残高がマイナスに落ちる月があれば、つなぎ資金や投資額の縮小が必要です。「通るかどうか」より「耐えられるか」が先でしょう。
Q3. 「減価償却費」を引いた上で、本業は黒字になりますか?
補助金収入は一時的でも、減価償却費は数年続きます。ここも数式で整理します。取得方法は、設備価格と耐用年数を確認し、定額法で概算します。計算式は、年間減価償却費=取得価額÷耐用年数。結果として、例えば600万円の設備を6年なら年間100万円が利益を圧迫します。月あたり約8.3万円。これを吸収する粗利が生まれないなら、補助金で導入しても経営は楽になりません。反論として「現場が楽になる」は重要ですが、数字で裏付けられると強いです。
Q4. 事務処理の「専任担当」を確保(または外注)できますか?
申請がゴールではありません。採択後に交付申請、実績報告、証憑管理、場合によっては事業化状況報告などが続きます。社長の片手間では回りにくく、経理や現場が疲弊します。担当を置けないなら、支援機関や外注を使う選択もありますが、費用が補助金メリットを削る点も要注意。やるなら「誰が、いつ、何を保管し、どこでチェックするか」まで決めると安心です。ガチガチに見えても、後でラクになります。
Q5. その投資は「誰の」課題を解決しますか?(現場 vs 社長)
投資が成功する条件は、現場の切実さとKPIが一致することです。例えば「残業が月40時間減る」「段取り替えが1回10分短縮」「不良率が1%下がる」など、具体名詞と数字があるほど強い。取得方法は、現場の作業記録やタイムスタディ、ヒヤリハットの件数などを集める。計算式は、削減時間×人件費や、不良削減数×単価。結果が投資回収の根拠になります。逆に「便利そう」「成長しそう」だけなら危険信号です。
それでもGOなら…賢い社長の「補助金活用・3つの鉄則」
厳しめに書きましたが、条件が揃う投資なら補助金は強い味方です。ポイントは、制度に使われず制度を使いこなす順番にあります。ここでは成功確率を上げる3原則を示します。未来の自社が、設備やITを武器に成長していく姿をイメージしつつ、同時に足元の資金繰りも守る。その両立ができます。
鉄則1:補助金は事業の「加速装置(ブースター)」として使う
事業計画が先、補助金は後です。自社の勝ち筋が見えているなら、設備投資や販路開拓を前倒しし、成長速度を上げられます。逆に、補助金に合わせて事業を作ると、必要の薄い投資や不自然な計画になりがち。一般的見解として、採択されやすい文章より、実行できる計画が長期で強い。もし迷ったら、補助金が無い世界でも顧客が増える絵を描けるかで判断します。そう思えたら、GOの価値は高いでしょう。
鉄則2:まずは「リスクの低い補助金」でリハーサルをする
いきなり大型投資に行くほど、制度対応の難易度と資金負担が跳ね上がります。まずは小規模事業者持続化補助金や自治体の助成金など、比較的スモールスタートの制度で、申請から報告までの流れを経験する手が堅い。経験が増えると、必要書類や証憑の管理、社内の段取りが整い、次の投資判断が速くなります。「うちは補助金に向く会社か」を試す段階としても有効です。いわばウォーミングアップですね。
鉄則3:成功報酬型コンサルではなく「認定支援機関」と組む
採択だけをゴールにする支援だと、導入後に残る事務と実行は自社に返ってきます。そこで、採択後の資金調達や実績報告まで伴走できる相手が望ましい。顧問税理士や金融機関、認定支援機関は、事業と財務を一緒に見やすい立場です。もちろん相性はありますが、判断の軸が「採択」ではなく「経営」に寄るのがメリット。反論として「実務は全部丸投げしたい」も分かります。ただ、丸投げほど中身が空洞化しやすい点は忘れないでください。
まとめ:補助金に使われるな、使いこなせ。
補助金ありきの投資判断は、割引の魅力で判断が歪みやすい一方、正しく使えば事業の後押しになります。5つの診断で1つでもNoなら、縮小や延期も立派な経営判断です。逆にYesが揃うなら、資金繰り表とKPIを整え、制度のルールに沿って淡々と進めましょう。迷いが残るなら、セカンドオピニオンで検討を深めてください。未来の自社を守り、伸ばすのは社長の冷静さです。さあ、今日ここで一段強い判断をしませんか。
